大変悩んでおられるお客様がいました。いわゆる成熟しきった業界、先代が天才ゆえ、カリスマ的に店舗展開、手広く事業を拡大しましたが、時代の変遷と共にずれが生じ、売上が減少、設備を必要とするお仕事のため、借入金の返済が重くのしかかります。古参社員さんたちに厳しい現実をどう伝えるか、とにかく問題山積み、どこから手を付けていいやら・・・
社長を引き継いで数年間、結果を出せていないその方は、厳しい面持ちで事務所の勉強会にやってきました。ひとしきり、社長が悩みや問題点満載の体験発表を終えたとき、重苦しい空気が会議室に立ち込めました。
私も担当者も、その空気にすっかり飲み込まれていた矢先、その場の空気を一変する、起死回生の天の声を頂きました。藁をも掴もう、その方の祈りが通じたのでしょうか。大尊敬して止まない、かつ大親友である、その方の意見は、大いに勇気と希望を与えるものでした。
「めばった木」それは、とんでもなく成長が遅い木。周囲の木は優に20mを超えて成長しています。普通なら発育不良と間引木されそうですが、逆に、日当たりが悪い、水はけが悪いなど、これだけの悪条件の下、根っこが腐っていない木は、とびっきりの大木に大化けする可能性を秘めている木として、とても大切にされるそうです。
他の木が、お日様の光を浴びてグングン背を伸ばしている間、めばった木は、粛々と根を養い、栄養を蓄え、時が来るのをじっと待っています。そして、条件がそろったその時、信じられない爆発的な成長を遂げ、普通の木の何倍も強くて力を秘めた名木となるそうです。大切なことは、伸び悩んでいる間、根っこが腐っていないこと。
その方は迷いなく、社長がその「めばった木」であると明言しました。思い起こせば確かに、一見のんびり屋にも見えるその社長は、この数年間、腐ることなく現実を客観的に受容し、様々な制約の中、折れることなく、できることを飄々と積み重ねておられました。私には到底真似できないことです。
その瞬間、周囲の社長を観る目が激変しました。私はその社長を、ただ表面的に見ていただけで、社長の背後にある徳を観ていませんでした。社長だけでなく同席されていた幹部の方の顔色まで変わった事を私は見逃しませんでした。
事態は何も変わらなくとも、心の有り様で人はここまで奮起できる!希望を持つことがどれだけ人に力を与えるか目の当たりにしました。あとは実践あるのみ。早速、作戦会議のスタートです。
私たちは皆、誰もが「めばった木」、そして社会は「めばった木」が群生する森なのだ!そう考えたらクスクス笑いがこみ上げてきました。私も腐ることなく積小為大、毎日を懸命に生きようと思います!